#004



「ついにこの日が来たな……」
「ああ、四年待った甲斐があった」
「よし、みんな行くぞ! 閏(うるう)・レッド!」
「閏・ピンク!」
「閏・ブルー!」
「閏・イエロー!」
「(四人揃って)閏年戦隊、ウルウフォース!」
「……決まったな!」
「ああ、四年振りとは思えんチームワークだ」
「あたりまえじゃない、何年やってると思ってるの」
「よーし、乾杯だ乾杯!」

 ウルウフォースは四年ごとに集まってお酒を飲んだり、楽しく騒いだりします。ハメをはずすこともありますが、まあ四年に一度のことなので周囲も大目に見ています。





「その凝り固まった脳みそで、もう一度よく考えてみろ」
 彼は苛立ちを隠さず、ドアを乱暴に叩き開けてそのまま出て行った。僕はもう一度よく考えてみたが、凝り固まった頭から出てくる答えはやっぱり同じものだった。彼が開け放した扉を見つめるうち、そういえばどれほどの間ここから出ていなかっただろうか、そのことにぼんやりと思い至った。部屋に冬の外気が流れ込み、冷たくて気持ちいいな、とそれだけ感じていた。





僕が君を抱きしめると
君はいつもチアノーゼ

こんなに愛しているのに
いつも君は呼吸困難に陥る

離したくない
でも離さないと死?

ギリギリの線で迫られる決断に
僕は恍惚とした表情で君に訊ねる

「ギブ? ギブアップ?」

嗚呼
愛のチョークスリーパー
それは世界一アグレッシブな愛





 早いもので、しげのりが世界を救いに旅立ってから半年が過ぎようとしていた。
 彼が本当に世界を救えたか否かは、世界が滅ぶそのときまでわからない。いまこうして林田たちが変わらぬ日常を過ごしているということは、しげのりが世界を救ったか、もしくはまだその只中にあるからだろう。
 林田には、しげのりがどんな闘いを繰り広げているのか想像もつかない。二分の一の確立で、その闘いの場に立つのは自分だったにもかかわらず。
 世界はいつも自分の知らない闘いで満ちていて、林田はしげのりと同じ闘いを戦うことはないけれど、しげのりが負けたときには確かに林田も負けたことになるのだと思う。それは悔しいことなのだろうか。仕方がないと無為にあきらめることができるのだろうか。
 眩しい空をぼんやり見上げていると、くしゃみが出て我に返った。
 自分で勝敗を決めなくていい気安さと、同時に歯がゆさと嫉妬とが林田の胸の奥底でどこまでもとぐろを巻くのだった。





【ファイティング・ニモ (前編)】

 この世界が有限のものであるならば、自らに科された限界もまた必然のものだろう。
 しかし、もし世界が無限のものであるとしたら――

「パパ? ねえパパ、どうしたの」
「ん。ああ、いや。すまんな、ニモ。ちょっと考え事をしていた」
 眩しい太陽が、澄んだ海中をあまねく照らしていた。のんびり揺れる水面を写し取った光彩が豊かな珊瑚の森に揺れる。
 暖かな南の海、珊瑚礁。そこは海洋生物たちの命あふれる世界だった。ニモとその父であるマーリンもまた、その楽園に住まう熱帯魚だ。人間がカクレクマノミと分類する小柄なオレンジ色の魚。古巣のイソギンチャクの腕の中で平和に暮らしていた。
「パパ、今日はなにして遊ぼうか!」
「ううむ、そうさなあ……。かくれんぼなどはどうだ?」
「あはは、昨日もやったじゃん。暖かすぎて脳がふやけちゃった?」
「フフフ、こいつめ、なんてことを言いやがるか」
 親子は今日も平和に笑いあう。ニモはマーリンを愛し、マーリンもまたニモを愛していた。お互い、父として、息子として、そして――。
 ふと、マーリンは息子の視線を感じた。
「どうした、ニモ」
 問われてニモは父を凝視していたことに気がついたのだろう、視線をそらすと消え入りそうな声で言った。
「パパ、なんだか最近ヘンだよ。いっつも遠いところを見てるような……」
 マーリンは息を呑んだ。思わずエラがひきつる。ニモ、それはおまえの気のせいさ、その一言は泡となって水中にむなしく散った。
「やっぱりパパはこの前のことを」
 うつむいたまま、ニモ。マーリンは自らを落ち着かせるべく一拍置いて応えた。
「そんな……そんなことはない。ニモ、私がおまえを置いてどこかへ行くわけがないだろう」
「本当に本当?」
 なんと馬鹿な親なのだろう、可愛いわが子をこれほど不安に陥らせていたとは。マーリンは自らを恥じた。
「ああ、もちろんだとも、ニモ。約束す……」
 あるいはここでマーリンがよき父親でいることを誓えたとしたら、ニモの世界の平和は保たれたかもしれない。しかし現実は、ニモとマーリン、彼らを彼らの住む世界ごとなすすべなく飲み込む大津波のようなものであったのだ。

 ピィィイイーッ!

 その声は、ニモたちの泳ぐ幾百倍の速度で水中を伝わってきた。
「警告音!」
 マーリンがはっと顔を上げる。途端に周囲がざわめき始める。遊んでいた魚、眠っていた魚、全てが一斉に珊瑚の陰に隠れ始める。
「まさか、また奴らが……」
「パパ、早く逃げよう!」
 ニモは呆然として動かない父を尾びれで押しやった。それでもマーリンは動こうとしない。その時、親子に声をかける魚があった。
「おいマーリン、ニモ! なにしてやがる、とっとと隠れろ!」
「あっドリーさん、今の音はやっぱり!」
 ドリーと呼ばれた青い魚はニモに応えて言った。
「そうだまた人間が来るぞ! 今の声は外洋を泳ぐイルカが知らせてくれたものだろう。早く行くんだ、北の遺跡なら安全だ」
「ドリーさんも、はやく逃げて!」
「ああ。俺のことは心配いらない。それより……マーリン! しっかりしやがれ。ギルの二の舞になりたいか!」
 ギルの名に背びれを震わせ反応するマーリン。
「ギル……あいつは私をかばって人間の……人間の世界に連れて行かれた」
「そうだ、だからおまえは、あいつの犠牲を無駄にしないためにも」
「違う!」
 マーリンは叫んだ。心の底からの悲痛な叫びだった。
「ギルは……最期に言った。『魚が人に屈服するのが世の定めならば、俺はそんな定めなど否定してみせる』と」
「マーリン!」
「私は……私はただ人間の影に怯え、ギルが連れ去られる瞬間にすら目を閉じていた。これでは私は、ただの魚ではないか! 定め? 違う、私は魚という殻に閉じ込められ、海という檻の中で震えていただけだ!」
「ちょっ、マー……リン?」
「人間は地上を席巻し、海洋にまで進出してきた。彼らの限界は我らのそれよりも高いところにあるのか?! ならばそれをさらに超えようとしたギルこそが……!」
 あまりのマーリンの興奮ぶりに、ドリーは逆に冷静さを取り戻して言った。
「いいから。ニモ連れて逃げなさいよ」

「大丈夫……パパ?」
「……すまない。取り乱した」
 マーリン親子は北の遺跡と呼ばれる岩礁にやって来ていた。彼ら熱帯魚が滅多にひれをはためかせない場所である。陽の光は珊瑚礁同様に眩しいが、しかしこの場所ではそれが余計に闇を濃く見せていた。
「ここまで来ればもう安心だ。この遺跡は人間に見つかっていないからな」
 海底に立ち並ぶ石柱。ニモとマーリンはその陰に身を落ち着けた。
「なんだか不気味な場所だね」
 不安な様子を隠さず、ニモ。マーリンは努めて明るく振る舞った。
「ここは大昔、人間が住んでいた都だったそうだ」
「えっ。じゃあ人間は昔海の中にも住んでいたの」
「いや、この都は陸の上にあったそうだ。何らかの災害で一夜にして没し、いまこうして眠っているらしい」
「ふうん。人間も万能じゃないんだね」
 万能ではない。そうだ、当然のことだ。しかし今、人間どもは本来生きていけない水の中にまで活動範囲を広げている。奴らは自らの限界を無視している。ならば私も私の限界、カクレクマノミの限界を捨て去ればいいのだ。
 しかし。
「まだ帰っちゃだめかなあ……ノリスもチャックも捕まってなければいいけど……」
 怯える小さなニモの姿が、マーリンを強烈に現実に繋ぎとめた。私は何を考えているのだろう、本当に守るべきものを放り出そうとしてまで。
「――帰ろう、ニモ」
「パパ」
「もう人間どもも去ったことだろう。住み慣れたイソギンチャクに帰って、ずっと一緒に暮らそう」
 ニモの表情が一気に明るくなった。
「――うん!」
 息子の笑顔を見て、マーリンは何故か胸の奥が疼くのを感じた。いや、違う。自分は正しい判断を下したのだ。これ以上の選択は存在しないはずだ。
「家に帰ったら、かくれんぼしよう、パパ!」
「昨日やったじゃないか、ボケるには億年早いぞ、ニモ」
 親子はいつものように笑いあう。これでいい。これで。
「よーっし、じゃあ僕、かくれんぼの練習するよ!」
 無邪気にはしゃぎ、石柱の間を泳ぎまわるニモ。それを目で追いながら――
「なんだ、あれは……」
 マーリンは異常に気づいた。
 石柱の一本が不意に光を放ちはじめ、やがて収束し始めた光が意思あるものの腕のようにニモに向かって伸び始めた。
「ニモーっ! 後ろだー!」
 マーリンは尾びれが千切れんばかりの速度で泳いだ。光の腕がニモを捉える瞬間、渾身の力でニモを弾き飛ばし、代わりに光の中へ飛び込んだ。
「うっ……おおおおおおお!」
「パ、パパ?!
 ニモは混乱の最中、必死に父を助けようと試みた。しかし光に完全に阻まれ、マーリンに触れることすらかなわない。
 刹那、マーリンは理解した。この水没した都は、まだ死んでいなかった。そして災害によって沈んだわけではなく、かつての人間は望んで水中へ進出したのだと。この光は人間の身体を水中に適応させるための魔法のような技術であると。マーリンは光によってそれらの知識を瞬時に得たのだった。
「パパ、僕が調子に乗ってはしゃいだりしたから……ごめんなさい、ごめんなさいパパ! 帰ろう、早く帰ろうよ家へ! ねえパパ!」
 泣き叫ぶニモ。しかしそんな様子を目の当たりにしても、マーリンの心は不思議と痛まなかった。
「泣くなニモ。私はいま、とてもいい気持ちだ」
 生まれ変わるような、すがすがしい気分。今なら、行ける。地上だろうが、人間の世界だろうが。そして超えられる。全て超えてみせる……。
「すまんな……私は、私は魚類をやめるぞニモォオ!」
「パパ、パパーっ!」
 そしてマーリンを包む光が爆発した。太陽が海に落ちてきたようだった。ニモはくるくると吹き飛ばされた。意識を失う瞬間、空へと駆け上っていく一条のオレンジ色の輝きを見た気がした。





「田中。おまえは将来どんなことがしたいんだ?」
「俺はさ……先生。贅沢は言わない。毎日雲の流れるを見て過ごし、最低限のものを食べ、本を読みつつぐっすりと眠る。そんな生活があれば、他にはなにも」
「働くのはヤダ、食いっぱぐれるのはヤダ、やりたいことだけやりたいと」
「うん」
「去ねい!」





 僕が子供の頃からずっと住んでいるこの家は、縄文時代の遺跡の上に建っている。家を建てるときの土地調査で見つかったそうだ。遺跡は調査後にきれいに埋められ、今のこの家が建てられた。
 僕が歴史の勉強好きなのはそのせいだったのかと、今日初めてその話を聞いて思った。関係ないと言ってしまえばそれまでかもしれないけど、逆に影響受けないほうが不思議な気もする。自分の足元にはいつでも数千年とか数万年とか、ヘタすると数億年とか、そういう時間が層になっている。でかすぎて普段は気にかけもしないけど、いや、うん、でかすぎるから、意識して影響受けられることなんて全体のほんとに一部なのかもしれない。この家で、僕はそう思う。





 人間の眼の視角は180度近くあると言われるけど、見ているものの形や意味を本当に認識できる範囲は20度〜30度ぐらいであるらしい。
 だから見えていない全天330度以上の範囲のどこかにこの世界のひみつは転がっているのかもしれない。けれど、それは南半球の星座のように、今の僕が決して実感を持って眺めることはできないものなんだと思う。
 だから僕は期待を込めて、広げた星図に南十字星を書き記す。その瞬間に、本当の南十字星は見えなくなるけれど。





「あのさ」
「なに」
「なに食ったらそんな絵が描けるようになるの?」
「食いもの関係ないだろ」
「いや、あるね。絶対あるね」
「ないって。これはあれだよ、遺伝。うちの両親も絵とか描くし」
「遺伝かー。親御さんはどんなもん食ってた?」
「そう来たか」
「両親が食ったものから君ができたわけだろ」
「そりゃまあ、そうだけど。ていうかできた言うな」
「もっと言うなら、親父の親父さんとか、もう先祖代々なに食ってたか知りたい。たぶん大昔から君んちの家系が食ってたものって、結果的に絵の才能を伸ばすものだったんだよ」
「べつにそんな大したもん食べてなかったと思うけど……普通だろ。普通のもん食ってたって絶対」
「1つ1つは普通なのかもしれないけど、長い間の組み合わせでそうなるかもしれないし。たまたま自分ちの畑がそういう土だったのかもしれないし」
「どういう土だよ」
「芸術成分豊富な土壌」
「ありえない」
「なんか、幕府とかに逆らった芸術家たちが生き埋めに」
「……やな想像しちゃったなー」
「ま、言っちゃえば遺伝てそういうもんじゃないのかな? だから、」

 だからたとえば、地球と全然違う土地で育ったものを食べて育つ人間がどんなんなるかなんて、私には想像もつかなくて怖おもしろかったりするのです。

「そう、身体の基になる食べものが地球産じゃなかったら、地球出身の人間ていまの形をずっと保ってられるかな? 鳥とかだって、同じ種類でも食べるもの違うとくちばしの形違ったりするじゃん」
「どうだかなー。っていうか、俺はおまえがどんなもの食ってきたか知りたいよ」
「俺? 納豆とか好きだなー」
「わりと普通だなー」





「おい!」
「はい、なんでしょうお客様」
「詐欺だ! この土地のどこが東京ドーム二十個分の広さなんだよ!」
「いえ、ですから、ドームの部分を畳んで並べたとすれば、このぐらいでちょうど」
「はぁ?! じゃあアンタ畳んでみろよ、今すぐここで!」
「ちょっと、言いがかりは止めてください。こんな狭いところで畳めるわけないでしょう」
「やっぱり詐欺じゃねえか!」
「わからない客だなあ、畳んだドーム持ってくればいいじゃないですか!」
「なんだと、バカにしやがって」
「そっちこそ、四つに畳んでやる」





あなたの言葉は私には届かない
安易に夢を語れる場所から
安易に悲しみに浸れる場所から
安易に怒りを顕にできる場所から紡ぎだされた言葉は
あなたのいる高みから
細い一筋の滝として流れ落ち
霧散し
私のいるところには届かない





 自販機でコーヒーを買おうとボタンを押したら、コーヒーじゃなくて妙な小人みたいなのが出てきてしまった。
「よう、いい夜だな」
 小人は気さくな笑顔で自販機から這い出てくる。
「あ、ええ。そうですね」
 応えてから、しまった、と思った。どう考えてもおかしい。絶対かかわらないほうがよかったのに。しかも僕、敬語だった。
 小人は僕の内心の葛藤などお構いなしで、「フッ……」とキザったらしく笑みを浮かべた。
「……そうだな、こんな夜だもんな。コーヒーぐらい飲みたくなるさ。気持ちはわかるよ。俺だってそうさ」
 小人はポケットから煙草らしき(人生ゲームの子供のピンみたいだ!)に火をつけ、一服はじめてしまった。
「いまアンタが考えていることは、こうだ」
 そして唐突に語りだした。
「この小人、こんな小さい身体なのに煙草なんて吸って大丈夫なんだろうか……と」
「え?」
 ち、違う。そんなこと考えても。
「だが、気遣いは無用だぜ。小人が煙草を吸うのは珍しいか? まあ、アンタにとっちゃそうなのかもしれないが」
 確かに珍しいのかもしれないけど、いや、何か違う、根本的なところで。
「アンタがコーヒーを飲むのと同じことさ。俺が煙草を吸うことは」
 そこでようやく僕は割り込めた。
「――ちょっと、ちょっと待ってくれ、おまえは誰、いや、何なんだ。その、コーヒー買うと、なんで」
「なんで?」、何を言ってるんだと言わんばかりの表情だ、「そんなの、偶然だろ。たまたま俺が出てくる番だっただけだよ。コーヒーのとこに入ってたんだもん、俺」
 論点がずれてる。全く噛み合っていない。僕はいっそのことこいつを踏み潰して、見なかったことにして、コーヒーを買いなおそうかと思った。
 おそらく相当に微妙な表情をしていたんだろう、僕の顔を見上げると小人は心底意外そうに言った。
「ひょっとして、もしかすると、俺自身が珍しい?」
「うん」、むしろ変だ。
「そうかなあ」、小首をかしげる小人。さらに続けて、
「コーヒーのボタン押したのにメロンソーダが出てくることだってあるだろ?」
「メロンソーダは喋らないし煙草も吸わない。小人じゃない」
「あたりまえだろ。アンタほんとに変な人だなあ」
 なんだか泣き喚きたくなってきた。小人は困った顔で言った。
「じゃあいいよ、コーヒー買いなおしなよ。俺、中に戻るからさ。それじゃ、いい夜を」
 僕の返事を待たずに自販機によじ登ると、小人はその中へと消えていった。
 当然このまま立ち去るべきだと自分に言い聞かせつつも、僕は何かに取り憑かれたように百二十円を入れ、さっきと同じコーヒーのボタンを押した。
 缶コーヒーが出てきた。
 あたりまえのように出てきた。今の小人みたいに、あたりまえのように。
 プルタブを開けて(念のため、中に何かいないか確かめて)一気に飲み干した。ただのコーヒーだった。あたりまえだ、コーヒーなんだから。
 ……そりゃそうだよな、あたりまえのことなんだよな。
 いい夜だった。ぼんやりとした月を見上げながら、僕はしばらく何も考えずに夜風にあたっていた。





【負うた子が送り襟締め】

「ねー。とーちゃん、このほんよんで、ほん」
「おう。読むから、そしたらちゃんと寝るんだぞ」
「うん!」
「よーし、どれどれ……『シゲノリボール、第312話。シゲノリの怒りが頂点に達した時、彼の中で力がはじけた。スーパーシゲノリの誕生だ。もはやこの宇宙に、シゲノリの敵となる者は存在しなかった』」
「わあー、すげえー」
「おお、強いなシゲノリ。えーと、それで? 『同時に、味方となるものも存在しなくなった』……」
「わー、やっぱり、ちょっとめだつと、すぐになかまはずれになっちゃうんだー」
「……」
「とーちゃん?」
「……」
「ないてるの?」
「ああ、いや……父ちゃん、もう寝るよ。おやすみ……」



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